わたしとママ
あと何回、ママと買い物ができるのだろう?
あと何回、ママとおしゃべりできるのだろう?
わたしの足は疲れた。
ママと買い物。
この冬の時期に合わせて、ママには欲しい物があった。
『裾がゴムで、太もものところがダボっとしてて、中があったかくて、トレーナー生地のやつが欲しい。』
要するに、『裏ボアのスウェットパンツが欲しい。』
ママは70代の高齢者。
ママはひとりで買い物ができない訳じゃないけど、食料品以外の欲しい物はわたしか姉を頼る。
レディースSサイズは大きい。
大人であっても、子供サイズが着れる。
年齢と共に変化する体型。
体力も衰え、緑内障であるママがひとりで探すのは難しい。
2件お店を回って試着をするものの、
『丈はちょうどいいけど、太ももがキツイ。』
『太ももはまあまあだけど、丈が長い。』
ピッタリのサイズはなかなか見つからない。
この状態では、高齢のママを色々なお店に連れて歩くのは厳しい。
ママに対して、傷つき、苦しみ、悲しみに暮れた過去はめいっぱいある。
けど、わたし自身も歳を重ねて、ママが高齢になった今、ママが小さく見える。
子供の頃は、ママがわたしの手を引いて歩いていたのに、今ではわたしがママの手を引いて歩いている。
ママを建物内のベンチに座らせ、わたしが店を回った方が早い。
建物内は広く、わたしは目星を付けて店を回った。
わたしの足は疲れた。
裾は折り曲げなきゃダメだけど、太もも部分はゆったりしていて、裏ボアも厚いスウェットパンツを見つけた。
ベンチで座っているママを呼びに行き、店に案内した。
そのお店では試着室が無かったけど、ママの『OK!』が出たので買うことにした。
家でそのスウェットパンツを着てみると、かなり気に入った様子。
わたしは『とりあえず、よかった。』
たとえママが小さく見えても、親子の立ち位置は守ろう。
親(目上)としての立場を保ちながら、わたしがママを守る。
それでも、衝突する時はあるだろうし、派手な言い合いもするだろうけど。
わたしの生涯、ママとずーっと一緒には過ごせない。
パパと同じように、いつか旅立つ時は来る。
親子の時間。
ママが喜んでくれるなら、わたしの足は疲れたままでいい。